【ツアー報告】<ICAN>2023年夏のフィリピン・スタディツアー

8月23日(水)〜27日(日)にICAN「フィリピン・スタディツアー」を催行しました。

2020年に感染が広がったコロナウイルスの影響により、ツアーが催行できていなかった期間に、ICANの活動地でコロナ前と比べて変化があったと聞き、稲谷がツアーに参加し、現場を見てきました。

ICANは、フィリピンを訪れた1人の会社員が子どもたちの置かれた現状を前にして「何かできることがあるはず」との思いから1994年に設立されたNPO団体です。詳しくは、【ICANのホームページ】をご覧ください。

 

〜 8月23日(水)〜 

参加者の方々が関西空港、成田空港からマニラ空港に集合。
マニラ首都圏の高層ビルが立ち並ぶ、金融・商業の中心地であるマカティのショッピングモールでキラキラした雰囲気に少しドキドキ。
(マカティにて)

マカティから本日の宿泊先、ISIS Internationalへ移動。
移動中は日本では考えられないくらいの渋滞。少しの間を車もバイクも通り抜けようとしていて、車線なんか関係ないほどぎゅうぎゅう。

宿泊先で関西空港・成田空港よりも遅い時間に到着の中部空港組と合流。参加者全員が揃いました!
夕食後はフィリピンで話されている言語の内の1つ、タガログ語講座です。
(タガログ語講座)

 

〜 8月24日(木)〜

朝、宿泊先のスタッフにMagandang umaga(おはようございます)と早速学んだタガログ語で挨拶。
2日目はICANが1996年からプロジェクトを行っている、フィリピン最大のごみ処分場パヤタスへ。
昨日マカティから宿泊先へ向かうときより交通量は少なそう。
フィリピン特有の交通手段である、乗合バス「ジプニー」をたくさん見かけました。
道路の左側は鉄道建設中で道路に沿ってとても長い高架ができていました。
(右手シルバーの車がジプニー)

パヤタスは、2000年のゴミ山崩落事故で世界的に有名になった場所です。事故当時は一週間くらい雨が続いており、小学校が休校になっていたことで、子どもたちも犠牲になりました。
2017年12月、このときも大雨が降っており、政府はパヤタスのゴミ山を閉鎖。そのため、ゴミ山で働いていた人たちは経済的に苦しい状況に。新しくできているゴミ山へ行ったり、町中を走っているトラックからゴミをもらったり、出稼ぎや通いで仕事をしています。
(ゴミを載せたトラック)

2グループに分かれて、ごみ処分場周辺で暮らす方へ家庭訪問。
移動中、すれ違う人からHelloやWhat’s your name?と声をかけられることが多く、ICANとパヤタスの人たちとのとても強い信頼関係が感じられます。

私が家庭訪問したのは70歳を超える女性。ゴミ山での仕事がないため、ナベの敷物やトートバックを作る仕事をしており、彼女の収入で息子・孫娘と生活をしている。彼女の息子はゴミ山での事故で足を痛め、仕事ができない。彼女が病気になれば収入がなくなることをとても心配していた。病気になっても通院費がなく、自力で治すそう。そんな彼女の夢は孫娘が学業を無事に終えること。
(家庭訪問へ向かいます)

家庭訪問後は、2グループ間でシェアリング。
お話を聞いたどちらの家庭も毎日の生活がやっとの収入で「政府に期待することは何もない」と。
もう1つの家庭訪問先は、ゴミ山が閉鎖されたことにより、前より更に生活が厳しくなっており、私の家庭訪問先と違い、職業訓練を受けていなかったそう。「ゴミ山が再開してほしい」という言葉にいろいろ考えさせられます。
(シェアリング準備中)

次は、フェアトレードの生産をしている住民組織SPNPと交流。2000年のゴミ山崩落事故を受け、ゴミ山に依存しないようになりたい!と、手芸の技術訓練を受けたパヤタスのお母さんたち。
お母さんたちの作った商品を見ながら説明してもらいました。分業制でテディベアなどを製作。テディベアは1日10体ほど作れるそう。独特な生地、バティックを使用したものもあり、何より手作りのため少しずつテディベアの顔が違うのもかわいいです。とっても明るく素敵な笑顔のお母さんたちでした。
(フェアトレード商品)

そして、今日の宿泊先のICANの子どもの家に到着。
子どもの家は、マニラで路上生活をしていた子どもたちが、安心して生活し学校に通うことができるようにと設立された児童養護施設です。
子どもの家に着くと、何人もの子どもたちが出迎えてくれました。早速カードゲームしよう、ボールで遊ぼうとのお誘い。子どもたちはとっても元気!
(玄関で待ってくれていた子どもたち)

 

〜 8月25日(金)〜

3日目はICANが2006年からプロジェクトを行っている、路上で暮らす子どもたちとの交流。
交流場所までの移動で、大きい道路に面した路上で過ごしている人たちを見ました。路上で暮らす子どもたちは物乞いや信号待ちの車の窓拭きなどをしてお金を稼いでいます。車通りが多く、とても危険な仕事です。そんな危険な思いをして稼いだお金を食費ではなく、ネットカフェでのゲームに使ってしまう子どももいるそう。
(お店の屋根の下で過ごす人たち)

交流場所ではたくさんの子どもたちが待っていてくれました。
一緒に体を使ったゲームで楽しみます。子どもたちはとても真剣で、ゲームに負けると本気で悔しがっていました。

ここでは、3人の子どもたちからお話を聞きました。
停車中の車の運転手に物乞いをしているときにバイクとの接触事故にあったり、いきなり怒られる。酔っ払いに急に銃をつきつけられたり、物が盗られる可能性があったりと、路上での生活には危険がいっぱい。
また、子どもたちは学校に通いたいが経済的に苦しく、通学が困難。小学校の授業料は無料だが、他の通学に必要な費用(制服、昼食代、通学費、宿題で使う画材などの費用)が払えない。学校を卒業しなければいい仕事に就けないため、家族を支えるために勉強したいと。
(子どもたちと順番に自己紹介)

その後、ICANの子どもの家に戻り、元路上生活をしていた青少年の協同組合「カリエ」のメンバーからお話を聞きました。
危険が多い路上での物乞いの収入ではなく、安心で安定した収入を得て生活できるように、パン作りや営業、マーケティングなどの技術訓練を行い、カリエカフェをオープンするも、2020年コロナでロックダウンのため閉鎖。しかし、コロナ禍でもカリエは解散せず、オンラインでバナナチップスなどの販売を開始。昨年からシフォンケーキも作っています。
お話を聞きながら、彼ら手作りのシフォンケーキをみんなでいただきました。とってもふわふわでしっとり。おいしかったです。

また、カリエは、貧困の連鎖を断ち切る、路上の子どもたちへの還元をするため、4つの地域で子どもたちに路上教育をしています。具体的には、自分たちのライフヒストリーや経験やアドバイスを伝える場を設ける、子ども会議などを行なっています。
カリエが路上の子どもたちのロールモデルとなり、路上で生活している子どもたちが「自分もあんな人になりたい、この生活から抜け出したい」と思ってもらう気持ちが大切だと話してくれました。
(カリエからお話を聞く)

そしてなんと!この日はカリエカフェのオープン日!オープニングセレモニーにも参加させてもらいました。
カリエカフェでは、シフォンケーキやバナナチップ、カモテチップス、ドリンクなどが買えます。
(オープニングセレモニーの様子)

晩ごはんは、子どもの家の子どもたちと一緒に。
ツアー中、白ごはんが欲しくなるようなおいしいおかずとおいしいフルーツが食べられて幸せでした。バナナは日本で食べるものより黄色くてとても甘く、マンゴーももちろんおいしい〜!おかずはお肉もお魚も出てきました。パヤタスでお母さんたちが作ってくれた、少し酸味を抑えた酸っぱいシニガンスープも、ちょうどいい酸っぱさでとてもおいしかったです。

(子どもの家でメニューの説明中)

この日の晩ごはんの後は腕相撲大会が行われました。
絵を描くのが得意な子は似顔絵を描いてくれたり、みんな思い思いの時間を過ごしていました。
(腕相撲大会)

 

〜 8月26日(土)〜

4日目は昨日交流した路上で生活している子どもたちと公園へ遠足です。
子どもたちはとっても楽しみにしてくれていたようで、縄跳びやボール遊び、フリスビーなど次々と遊びをしようしようと誘ってくれます。
マラソンをすると急に駆け出したり、長い階段を登ってみたり……。

(子どもたちと遊びまくります)

お昼ごはんはみんなでジョリビー(フィリピンのファーストフード店)のチキンとごはんセット。
一生懸命、黙々と食べる子どもたち。少ししか食べずに持って帰る子、余りを集め、家族の人数分数えて持って帰る子もいて、胸が締め付けられる思いでした。
(子どもたちがお祈りしてから食べました)

ごはんを食べた子どもたちは変わらず元気いっぱいです。まだまだ遊びます。
遊んだ後は、2人1組になってお互いの似顔絵とメッセージを書きました。
私のパートナーの男の子は遊んでいるときあんなに元気いっぱいだったのに、絵は苦手らしく、少し照れた表情。「綺麗に描いてね」と言うと爆笑された。なぜ。
彼は字が書けないらしく、メッセージは友だちに代筆してもらっていました。
(男の子からもらった似顔絵)

この日の晩ごはんに出てきた、ランブータン。見た目は違うけど、味はライチに近く、甘くておいしいフルーツ。
このときはわからなかったけど、何かめっちゃ気になっていたランブータン。帰宅後に判明。最近もらっておいしいと思っていたはちみつがランブータンのはちみつでした。箱に思いっきりランブータンって書いてる…!思わぬところで繋がっていました。
(右側がランブータン)

 

〜 8月27日(日)〜

最終日、中部空港・関西空港組は朝4時に出発し、マニラ空港へ。
マニラ空港で解散のため、これでICANのツアーは終了です。

搭乗時間を待っている間に、出発前にいただいた朝ごはんを食べ、搭乗ゲートを確認。と、動いている間に私を襲っていたのは昨日の子どもたちと走り回った筋肉痛…。普段インドアのツケがこんなところで…。他に誰も筋肉痛なんてなっていない様子。気持ちに体がついてきていない証明のようで悲しい。あんなに動いて1on1したけど1回もボール取れんかったのも思い出して、なんか余計に悲しい。でも、それ以上にたくさんの情報を吸収し、宿泊先に帰っても1人で振り返って考えることの多い、実りの多いツアーでした。余韻に浸りながらホクホクした気持ちで帰宅。

 

■■□  最後に □■■

ICANのツアーは社会人でも参加しやすい、5日間と期間の短めのツアーです。しかし、この5日間でぎゅっとフィリピンのことをしっかり学べますし、海外が初めての人にもおすすめです。
今回のツアーも参加者の年齢は様々。そのため、毎日その日の振り返りを共有するときに、自分とは違う目線・感じ方を知れるのもおもしろかったです。
また、子どもの家では子どもたちが暮らしており、子どもたちとの交流の時間が多いのもこのツアーの魅力の1つ。晩ごはんを食べてから寝るまでずっと遊んでいる参加者もいました。
ツアーに参加してみて、フィリピンの貧困やパヤタスなど、今まで見たり聞いたりしたことはありましたが、やはり実際に見て肌で感じるのは全然違います。自分で体験することは大事だなと改めて感じました。
自分に何ができるか、何をしたらいいかわからないという人は多いと思います。わからなければ、実際に見てみて、まずは知るところから始めませんか?


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